…足下には潰れた雪ウサギ  −そして…  泣いている女の子  …ごめんね、私が悪いんだよね…  …違う…悪いのは俺だ…  …悪いのは… 「……サイアクの目覚めだぜ…」 「わ わ 遅刻しちゃう!! 私 部長さんなのに!!」 「あらあら日曜日なのに学校?」 「部活の朝練だよー」 「名雪!トーストとコーヒーな」 「ありがとー祐一 今朝も起こしてくれて感謝だよ〜」 「…いいから、食うかしゃべるかどっちかにしろよ」 「いってきまーす!」 「コケるなよーッ!」 「………」 「あ!片づけなら俺がやりますよ」 「あらいいんですよ、祐一さん」 「それに今日は、香里さんと映画に行くんでしょう?」 「え!?」「…し 知ってたんですか? 秋子さん… 俺と香里のコト…」 「ええ。名雪が楽しそうに話してくれましたよ」 「………すみません」 「…どうして祐一さんが謝るんです?」 「…そ…それは……あの……」  …そう 思い出してしまった…7年前の自分の咎  何も知らないってカオをして、7年振りに現れた俺を…  名雪は、いったいどんな気持ちで迎えたんだろう……  そして、親友の香里に惹かれていく俺を  …どんな想いで見てたんだろう 「…祐一さん?」「……どうしたんです?」 「あ…いえ、別に…」  …そうだよな、もう7年も前のコトだ 「…ちょっと…ボーっとしてただけです…」  ましてや子供の頃の話なんて…今さら… 「…そう …ならいいんですけど…」 「ここのところ、祐一さんの様子が少し変だったから、ちょっと気になってはいたんですよ」 「名雪がすごく心配してて…。自分が、また何か祐一さんに迷惑をかけてるんじゃないか…ってね」  … 「あ…、…秋子さん…。…じつは俺…」 「…そう、思い出してしまったんですね、…7年前のあのことを…」 「!? …知ってたんですか?秋子さん…」 「ええ… ある程度は」 「これでもあの子の母親ですから」 「……」 「あの… 何も…言わないんですか?」 「−あら? 何をですか?」 「どんな理由があったにせよ、オレは名雪を傷つけました。あまつさえ、そんな大事なことも忘れて…」 「祐一さん。クラッカー食べません? 昨日焼いたんですけど…」 「は?」 「こうやってジャムを乗せて食べてみてください。おいしいですよ♪」 「いや… オレ甘いモノは…」 「さ、どうぞ」 「…」  サクッ!! 「……!! おいしい……」 「−でしょう♪」 「なんだろう… 適度な甘さで良い香りで… 不思議と落ち着く…」 「そのジャムは名雪が作ったんですよ。甘い物が苦手な祐一さんでも食べられるようにって…」 「………」 「…祐一さんは、名雪のことキライですか?」 「い… いえそんな… けっしてそんなことありません!!」 「ですよね …だったら、今までどおりでいいんじゃないですか?」 「あの子は祐一さんが思ってるよりしっかりした子ですよ」 「7年前にあの子が受けた心の傷は、7年の時間をかけていやされてきたモノなんですよ」 「でも、その記憶を閉じこめてきた祐一さんの傷は」 「…誰も癒してはくれなかったのですね。…あまり、自分一人を責めてはダメよ」 「………。…はい」  そのときの秋子さんは 「ただいまー!!」  少しだけ母さんの匂いがした… 「あら、お帰りなさい」 「おナカへったヨー」 「そうそう、祐一さんから言付けですよ」 「映画が終わったら香里さんと3人で百花屋に行こうって」 「イチゴサンデーをおごってくれるそうよ」 「ホントー!?」 「わ わ うれしいけど…なんでだろ?急に…」  …降り積もる歳月とともに…  埋もれていた自分の咎は 「名雪が作ってくれたジャムのお礼だそうよ」 「わーお母さん アレ祐一に食べさせたの!?」  7年の月日を経て静かに駆け出し  その下に隠れた真実をさらけ出す……  …そう、忘れていたのはかつての過ちではなく 「うー、まだ試作品だったんだよー」 「祐一さんは美味しいって言ってましたよ」 「うっ…で、でもー…」  …大切な思い出…  心優しい少女とのかけがえのない日々と…  その切なる想いを…  END